内科症例紹介
内科診療科には、血液疾患や自己免疫疾患、腫瘍性疾患や感染性疾患など様々な疾患の症例が来院します。
その中で、来院件数の多い疾患や特殊な治療法を行っている症例について、紹介いたします。
内科獣医師紹介
- 症例2.「免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia: IMHA)」
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免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、赤血球が免疫学的機序により破壊され、貧血を起こす疾患です。
沈うつ、運動不耐性、可視粘膜蒼白、呼吸促迫といった貧血による症状が主に認められます。
また、肺血栓塞栓症や播種性血管内凝固といった重篤な合併症を認める症例も少なくありません。
当センターでは、本疾患に対して集中的な免疫抑制療法と必要に応じて輸血療法も行っています。(文責:馬場)
- IMHAの犬で認められた血管内溶血
- IMHAの犬で認められた赤血球の自己凝集
- 症例3.「炎症性腸疾患」
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炎症性腸疾患は、小腸または大腸の粘膜における炎症によって慢性的な下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少、腹水貯留といった症状を引き起こす疾患です。
症状は軽症から重症まで様々ですが、一般的な治療に反応しない難治性の重症例も少なくありません。
当センターでは、内視鏡検査による詳細な病態の把握とより確実な診断を行っています。
また、一般的な治療に反応しない重症例に対しても様々な免疫抑制剤等を用いた積極的な治療を行っています。(文責:馬場)
- 腹部超音波検査によって認められた腹水および腸管壁の不整
- 内視鏡検査によって認められた腸粘膜の不整と浮腫
- 十二指腸粘膜の炎症(リンパ球の浸潤)
- 症例4.「犬アトピー性皮膚炎」
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犬アトピー性皮膚炎は、主な症状が痒みであるため、ワンちゃん自身の生活の質を著しく損ねるだけではなく、飼い主様も見ているのがつらい疾患です。
そして残念ながら完全に治癒することは難しい病気です。
しかし、原因は環境中のアレルゲンであるため、適切な検査を用いて原因を同定し、原因に対する管理をすることで、
ステロイド治療を少なくできるばかりではなく、痒みが少ない状態で生活の質を維持できるようになります。
当センターでは、犬アトピー性皮膚炎を確実に診断し、それに基づいた生活環境の改善および適切な内服薬の使い方やスキンケアを飼い主様にご指導することにより、
ワンちゃんの生活の質を改善することを実施しています。(文責:水野)
- 治療前1
- 治療前2
- 治療後
- 症例5.「食物アレルギー」
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食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎と症状が類似しており、さらに診断方法が煩雑なため、うまく診断できていないことが多く見受けられます。
食物アレルギーは、食べ物に対するアレルギーであるので、確実に診断できれば、原因となる食物を避けるのみで快適な生活をおくることができる疾患です。
当院では、適切な検査を用いることによって原因として疑わしい食物を明らかにし、どのような食物を選べばいいのか、などのご指導も懇切丁寧に行なっております。(文責:水野)
- 治療前
- 治療後
- 症例6.「天疱瘡」
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天疱瘡は、免疫が関与する重篤な病気であり、その病態は、免疫が過剰に働くことにより自分自身の皮膚の細胞を攻撃することで、皮膚に膿疱(ニキビみたいなもの)や痂皮(カサブタ)ができる疾患です。
そのため様々な感染性疾患やアトピー性皮膚炎と混同されたまま治療されることも多い疾患です。
従って、皮膚の生検による病理組織学的検査によって確実に診断することが必要となります。
治療法は、過剰に働く免疫反応を抑えるためにステロイドに種々の免疫抑制剤を加えて使用しますが、
当院では、ステロイドと種々の免疫抑制剤をうまく組み合わせることにより、副作用や再発をしないように病気をコントロールするようにしております。(文責:水野)
- 治療前
- 治療後
- 症例7.「特発性多発性関節炎」
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特発性多発性関節炎は免疫抑制剤に反応することから自己免疫疾患と考えられています。
関節炎と言っても,歩き方に異常が認められることよりも,重度の炎症による発熱,元気消失,食欲不振などが来院のきっかけとなることが多い疾患です。
当センターでは関節液の穿刺による確定診断を行っており,これは多く場合,無麻酔で検査可能です。
また,本疾患に併発することが多いその他の免疫疾患についても併せて検査を行っています。
治療は免疫抑制剤が主体ですが,豊富な経験に基づいて副作用に注意しながら治療を行っています。(文責:奥田)
- レントゲンでは大きな変化は認められない
- 関節液には炎症細胞が多数認められる
- 症例8.「副腎皮質機能亢進症」
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副腎皮質機能亢進症は水を著しく多く飲むようになったり,全身の毛が抜けたり,腹部がぽってりしてきたりするホルモンの疾患で,中齢~高齢の犬に多く認められます。
副腎で産生される副腎皮質ホルモンの分泌過剰が問題ですが,犬では多くの場合,脳の下垂体が原因となります(クッシング症候群)。
当センターでは確定診断のためのホルモン検査,エコー,MRI,CTを用いた画像診断法を用いて確定診断を行うとともに,
通常行われる副腎皮質を標的とした抗ホルモン療法に加えて,下垂体を標的とした治療も行っています。(文責:奥田)
- 脱毛と腹囲膨満を呈する副腎皮質機能亢進症の犬
- MRIで検出された腫大した下垂体(犬)
- 症例9.「犬バベシア症」
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犬バベシア症は、バベシア原虫(B. gibsoniまたはB. canis)の赤血球寄生によって生じる溶血性貧血です。
ある種のマダニがバベシア原虫を媒介することが知られており、マダニが吸血する際に犬の体内にバベシア原虫が侵入し感染します。
国内では九州地方や中国地方を中心として、主に西日本で多発しています。
症状は発熱、貧血、黄疸、ヘモグロビン尿(赤褐色尿)などが認められます。
当センターでは一般的な犬バベシア症の診断と治療のほか、再発例や薬剤耐性獲得症例に対しても積極的な治療を行っています。(文責:馬場)
- 犬に寄生したマダニ
- 赤血球に寄生したバベシア原虫
- 症例10.「レプトスピラ症」
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レプトスピラ症は病原性細菌であるレプトスピラ菌の感染を原因とする感染症で,犬では重篤な腎不全,肝不全を呈する疾患です。
また,レプトスピラ菌はヒトにも感染することからペットから感染する可能性のある重要な疾患の一つです。
当センターでは本疾患の診断に重要な抗体検査,遺伝子診断を行っております。
また,我々の経験では犬レプトスピラ症の治療には緩徐な細菌の除去が重要と考えており,これを実践することで高い治療成績を得ています。(文責:奥田)
- レプトスピラ症で黄疸を呈した犬
- 顕微鏡下凝集試験で抗体陽性を示した検体
- レプトスピラの遺伝子検査