放射線治療科症例紹介

放射線治療科には、神経疾患や整形外科疾患、腫瘍性疾患や眼科疾患など様々な疾患の症例が来院します。
その中で、来院件数の多い疾患や特殊な機器を使った治療法や手術について、何例かの症例を紹介いたします

放射線治療科獣医師紹介


症例1.「口腔内の悪性黒色腫(左扁桃のメラノーマ転移)」

YUAMECでは2016年5月よりリニアックによる放射線治療を開始し、2017年5月からは強度変調放射線治療(IMRT)が、同年12月から電子線治療が用いることができるようになりました。

従来より放射線治療に用いているオルソボルテージ(300kV)よりも、強力なリニアック(4-10MV)では深い位置の腫瘍に十分な線量を当てることが可能です。また、あらかじめコンピューターで線量分布を計算するために、眼などの重要組織の線量を下げることができます。

本症例は、これまでの治療では制御が困難だった口腔内の悪性黒色腫(メラノーマ)であり、原発腫瘍だけでなく、所属リンパ節にも同時に放射線治療を行い、また、化学療法を併用する集学的治療により、現在のところ13ヵ月以上の完全寛解という良好な治療成績が得られています。

放射線治療前 放射線治療終了時 放射線治療中 放射線治療6か月後 治療前 治療終了時 治療3か月後 治療6か月後 治療1年後 リニアックによる放射線治療の風景

  1. 放射線治療前
  2. 放射線治療終了時
  3. 放射線治療中
  4. 放射線治療6か月後
  5. 治療前
  6. 治療終了時
  7. 治療3か月後
  8. 治療6か月後
  9. 治療1年後
  10. リニアックによる放射線治療の風景
症例2.「下垂体腺腫」

脳腫瘍では、正常な脳組織への線量を抑え、腫瘍にターゲットを絞った照射プランを作成しています。また、脳腫瘍症例では、すでに脳機能の低下など全身状態が悪化している場合が多く、麻酔時間がより短縮できるよう原体照射(ガントリーを回転させながら照射)を用いています。

下垂体腺腫の本症例では、意識レベルの低下などは治療初期に改善し、また治療終了時のMRI検査では腫瘍サイズも明らかに縮小しています。

治療前 治療後

  1. 治療前
  2. 治療後
症例3.「上顎の線維肉腫」

本症例は左上顎から眼窩にかけての線維肉腫です。位置的に外科的手術が困難な部位であり、かつ眼や脳などの重要臓器に隣接する部位であるために、複数の方向から強弱をつけた放射線を照射することで、複雑な形状の照射範囲が可能となる強度変調放射線治療(IMRT)による放射線治療を実施しました。

本症例では治療開始直後より、徐々に腫瘍が縮小し、眼球突出の改善がみられており、流涙はありますが、皮膚の潰瘍など放射線による大きな障害は見られていません。IMRTによる放射線治療が可能になったことで、隣接する眼や脳などの重要臓器の障害を避け、皮膚の線量を下げながらも、腫瘍組織に線量を集中することが可能になりました。

現在(2018年4月)のところ国内の獣医療を提供する施設において、IMRTによる放射線治療が実施可能な施設は2つと限られており、山口大学動物医療センターはそのうちの1つです。

放射線治療中 治療終了3か月後 放射線治療中 治療終了3か月後 治療前 治療終了時 治療3か月後

  1. 放射線治療中
  2. 治療終了3か月後
  3. 放射線治療中
  4. 治療終了3か月後
  5. 治療前
  6. 治療終了時
  7. 治療3か月後